歯周病の治し方原因・セルフチェック・予防方法も解説!

成人の約70%以上が「歯周病に悩んでいる」と言われ、歯周病は歯を失う大きな原因の一つとして知られています。現在歯周病に悩んでいる方や、歯や歯茎の不調から歯周病を疑っている方もいるのではないでしょうか。

今回は、歯周病の概要やセルフチェックの方法から、歯周病の主な治療方法・歯周病を予防するポイントまでを解説します。

歯周病は進行性の病気であり、再発率が高いという特徴を持ちます。そのため、歯周病の予防方法や治療方法を知ることは、お口の健康のためにも非常に重要です。歯周病について気になっている方は、ぜひ参考にして下さい。

1.歯周病とは?

歯周病とは、歯の周りの「歯周組織」が細菌に感染することで炎症を起こし、歯周組織が破壊されていく病気です。歯周病の中でも、炎症部分が歯茎のみである場合は「歯肉炎」、深部の歯槽骨まで到達した場合は「歯周炎(歯槽膿漏)」と呼ばれます。

歯と歯茎の間の「歯周ポケット」と呼ばれる溝には、歯周病菌の住処である歯垢や歯石がたまりやすく、清掃が不十分であると細菌が繁殖して歯周病を引き起こします。

厚生労働省の資料によると、4mm以上の深さの歯周ポケットを持つ方の割合は年齢を重ねるほど増加しています。例えば、25~29歳で4mm以上の深さの歯周ポケットを持つ方は31.4%ですが、40~44歳で44.9%、60~64歳で57.9%にまで上ります。
(出典:厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」)

また、年齢を重ねるほど歯周ポケットの深さも増す傾向が見られます。

歯周ポケットが深くなるほど歯垢や歯石がたまりやすくなるため、歯周病は年齢を重ねるほど罹病(りびょう)する確率が高くなる病気です。

※罹病…病気にかかること

1-1.歯周病の原因

歯周病の原因として、以下の5つの要素が挙げられます。

①感染

歯周病菌は感染力が高く、食べ物や飲み物の共有、子どもへのキスなど、日常生活を行うだけで移る可能性が極めて高い病気です。できるだけ食べ物や飲み物を人と共有せず、歯周病の疑いがある場合は早く歯科医に相談しましょう。

①タバコ

タバコを多く吸うことで、以下の問題が発生します。
・唾液の量が減る
・ヤニのせいで歯垢が付きやすくなる
・ニコチンなどのタバコの成分でビタミンCが壊される
・ベタついた歯垢になる
・免疫力の低下を招き、歯周病自体の進行を早める
歯周病の予防のためには、タバコを控えるほうがよいと言えます。

①歯並び・噛み合わせの悪さ

歯並びや噛み合わせが悪いと、ブラッシングとデンタルフロスで落とすことのできる歯垢が減る傾向です。そのため、歯垢が歯石になって歯周病を進行させる恐れがあります。歯が重なっている部分、磨きにくい部分などはピンポイントに磨ける歯ブラシなどを使って歯垢を落とし、歯石化しないように努めましょう。

①ホルモンの影響

女性の場合は、妊娠・更年期などの影響で女性ホルモンの分泌量が変化します。
ホルモンバランスの影響により、歯周病菌が活性化して歯茎が腫れやすくなったり、歯周病になりやすくなったりするため、注意しましょう。定期的に、かかりつけの歯科医に口内環境の確認をしてもらうことが大切です。

①歯ぎしりや噛み締め

歯ぎしりや噛み締めにより、歯に負荷がかかることで、歯と歯茎の間に隙間ができ歯周病になる確率を上げます。歯ぎしりや噛み締めは、無意識のうちに習慣化しているケースがあるため治療が難しい傾向です。これ以上負荷をかけないよう、マウスピースなどで歯と歯茎を守ることをおすすめします。

歯周病の原因を理解し、日頃から口内環境を清潔にしましょう。

1-2.歯周病の進行過程

歯周病は突然症状が悪化するのではなく、細菌による炎症が広がることで、徐々に進行する病気です。ここでは、歯周病の進行過程について解説します。

健康な状態(歯周ポケット:1~2mm)
歯茎がピンク色で引き締まっており、歯周ポケットの深さが1~2mm程度が健康な状態です。
歯肉炎(歯周ポケット:2~3mm)
歯周ポケットに歯垢・歯石が停滞すると、歯茎が炎症を起こして歯肉炎となります。歯周ポケットも少し隙間が見られます。
【軽度】歯周炎(歯周ポケット:3~5mm)
歯周病が進むと歯周ポケットも深くなり、歯槽骨(しそうこつ)や歯根膜(しこんまく)などの歯周組織が破壊されます。
※歯槽骨…歯茎を支える骨
※歯根膜…歯槽骨を支える膜
【中度】歯周炎(歯周ポケット:4~7mm)
歯周病の炎症がさらに拡大され、歯槽骨が半壊すると中度の歯周炎となります。この段階まで進行すると、歯のぐらつきが見られます。
【重度】歯周炎(歯周ポケット:6mm以上)
重度歯周炎となると、歯槽骨が半分以上破壊されて、歯は抜けそうなほどぐらぐらになってしまいます。

歯周病の進行を防ぐためには、なるべく早く、かかりつけの歯科医に相談することが大切です。

2.【セルフチェック】歯周病かどうかを確認する方法

歯周病が疑われる場合は、自覚症状をセルフチェックすることで、歯周病かどうかをある程度判断できます。
以下の「歯周病のセルフチェックシート」を活用し、歯や歯茎の状態をチェックしましょう。

■歯周病のセルフチェックシート

・歯茎が赤色または黒色に変色している
・歯茎がブヨブヨと膨張している
・歯茎が腫れている
・歯茎が下がってきた
・歯が長く伸びてきた気がする
・歯と歯の間の隙間が広くなった
・歯と歯の間に食べ物がよく挟まる
・歯磨き時に歯茎から出血する
・歯茎から膿が出てくる
・歯がぐらぐらと動く
・口臭がくさい
・歯茎が痛い
・歯茎がむずむずとかゆい
・冷たいものや熱いものがしみる
・起床時に口内がねばねばする

該当する項目が多いほど、歯周病の恐れがあります。症状が進行している場合もあるため、一つでも当てはまる項目がある方は、なるべく早く歯科医に相談しましょう。

3.歯周病の主な治療方法3つ

歯周病の治療は、進行の程度に応じて適した治療方法があります。
以下は、歯周病の主な治療方法です。

・基本治療
・外科治療
・メインテナンス

病状が進むほど、歯周病菌によるダメージも深くなるため、大掛かりな治療が必要です。ここでは、進行の程度に応じた歯周病の主な治療方法について解説します。

3-1.基本治療

基本治療とは、すべての歯周病患者に施される歯周病の基本的な治療です。
下記は、基本治療で行われる主な内容となります。

・歯垢・歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)

歯周病の原因となる歯垢・歯石を、スケーラーと呼ばれる機器を用いて取り除く治療です。歯垢・歯石を取り除いた後の歯の表面は凹凸が多いことから、歯垢・歯石が再び付着しないよう、滑らかに磨きあげる処置が行われます。

・噛み合わせの調整

歯周病が進行すると、歯を支える歯周組織がダメージを受けて歯が動きやすくなります。歯が移動して噛み合わせに不具合が生じると負担がかかるため、歯を削って噛み合わせの調整を行う場合があります。

・歯磨き指導(プラークコントロール)

歯周病の治療では、毎日の歯磨きで歯周病の原因となる歯垢・歯石を取り除くことも重要です。そのため、基本治療の一環として、歯科医・歯科衛生士による歯磨き指導が行われます。

軽度の歯周病の場合は、基本治療で終わることが一般的です。

3-2.外科治療

歯周病が進行している場合は、以下のような外科治療を行うことがあります。

・再生医療

歯髄バンクなどに健康な歯髄を登録し、再生医療を受けて歯槽骨や歯自体を再生させることが可能です。ただし、個人の状況によって行える治療は異なるため注意してください。

・インプラント

歯槽骨の状況によっては、歯を抜きインプラントを行うことで歯の機能を再生できます。ただし、歯が抜けると歯槽骨も徐々に退化するため、できるだけ早めに歯科医院に行きましょう。

進行した歯周病は放置しても自然に完治することはなく、感染力も高い点が特徴です。自分だけでなく家族やパートナーに迷惑がかかる恐れがあるため、定期的に歯科医院を受診し、口内環境をチェックしましょう。

3-3.メインテナンス

メインテナンスとは、歯周病の再発予防のために、定期的に口腔内の歯垢や歯石を取り除く治療法です。

歯周病の原因となる歯垢のほとんどは、日々の歯磨きを正しく行うことで除去できます。しかし、歯垢を完全に取り除くことはできないため、徐々に歯垢は歯周組織に蓄積されます。そのため、歯磨きのみで歯周病予防を行うことは難しい傾向です。

メインテナンスを行い、定期的に歯垢や歯石を除去することで、歯周病菌の増加を防ぐことができます。

また近年の歯科医療においては、「予防歯科」の考え方が重要視されています。歯周病においても再発予防が重要であり、健康な方でも定期的なメインテナンスは必要と言えるでしょう。

4.歯周病を予防するためのポイント

歯周病を予防するために、以下の3つのポイントを意識しましょう。

・こまめに歯磨きを行い歯垢を落とす
・定期的に歯医者で健診を受ける
・歯周病になりにくい生活習慣を心がける

ここでは、歯周病予防のために意識すべきポイントについて、それぞれ解説します。

4-1.こまめに歯磨きを行い歯垢を落とす

歯周病予防のためには、歯垢を落としきり、歯石にしないことが重要です。

歯茎が痩せると歯と歯茎の間に歯周ポケットができるため、歯垢がたまり歯石ができやすくなります。歯石をきちんと取り除き、歯周病菌が増えないような口内環境を整えましょう。

歯垢をしっかり落とし、口腔環境を良好に保つために、以下のポイントを押さえて毎日の歯磨きを行いましょう。

・磨く場所に毛先をしっかりあてる

歯垢を落とす効果がある部分は、歯ブラシの毛先です。磨く場所に毛先があたっているかを確認しながら歯磨きを行いましょう。

・軽い力で小刻みに磨く

歯を磨く際は、軽い力で歯ブラシの毛先を小刻みに動かすことが重要です。力を入れて歯を磨くと、毛先が開いて歯垢を落とすことができず、歯や歯茎を傷つける原因となります。

・1箇所ずつ丁寧に磨く

歯垢は粘度が高く、少しブラッシングしただけでは落としきれません。1箇所につき15~20回程度を目安に、歯を1本ずつ磨くつもりで丁寧に磨くことが重要です。

歯周病予防のために、「歯間」「歯と歯茎の境目」「奥歯」など、歯垢がたまりやすく磨き残しが多い部分を丁寧に磨きましょう。

4-2.定期的に歯医者で健診を受ける

歯医者の健診では、歯石をクリーニングするだけでなく、以下のような項目をチェックしてもらうことができます。

・歯周ポケットの大きさに変化がないか
・歯垢を落とし切るケアができているか

定期的なチェックを怠ると歯周病が進行し、基本治療だけではカバーしきれなくなる恐れがあります。高齢になっても健康的に過ごせるよう、今から歯医者での健診を習慣化しましょう。

4-3.歯周病になりにくい生活習慣を心がける

歯周病は生活習慣病の一種と考えられることもあり、歯周病予防のためには生活習慣を正すことも重要です。
歯周病を悪化させる生活習慣には、以下が挙げられます。

・喫煙

タバコは歯周病を悪化させる大きな原因です。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素により、歯周組織に酸素や栄養が十分に運ばれなくなるため、歯周病菌に対する抵抗力が弱まります。
歯周病予防のためにも健康のためにも、できるだけタバコは控えましょう。

・ストレス

日々のストレスは体の抵抗力を弱めるため、歯周病になりやすくなると言われています。またストレスは、飲酒・喫煙などの習慣の原因にもなります。
歯周病予防や健康的な生活を送るためにも、定期的に運動するなど、適度なストレス発散を行いましょう。

・食習慣

糖分が多く含まれた甘い食べ物・ジュースなどは歯周病菌の餌となります。また、不規則な食事や栄養バランスの悪い食事は歯周組織の抵抗力を弱めるため、歯周病の罹病や悪化を招きます。歯周病予防のためには、甘いものを控え、規則正しく栄養バランスの取れた食事を心がけることが重要です。

歯周病になりにくい生活習慣を心がけ、日々の歯磨きを丁寧に行いましょう。

まとめ

歯周病に悩む人は多く、年齢を重ねるほど歯周病になる確率は高くなります。

そのため、現在歯周病に悩んでいる方だけでなく、歯周病を疑っている方や健康な方も、歯周病の原因や予防方法・治療方法について理解することが大切です。

歯周病は進行性の病気であり、歯周病で損傷した歯周組織を完全に治療することは難しいため、早期発見・早期治療が重要であることにも留意しましょう。

いつまでも健康な歯で食事を行うためにも、歯周病が疑われる方は、なるべく早くに歯科医院の受診をおすすめします。

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